最近、日本では幼稚園や小学校の子供を留学させたり、親子留学したりして
子どものころから英語を身に着けさせようとする保護者が話題になっています。
おそらく、早く教育を始めてバイリンガルに育てることを狙っているのでしょう。
(個人的には日本語をしっかり身に着けてから外国語教育を
する方がいいと思うのですが、それはひとまず置いておいて…。)
多言語環境にいる赤ちゃんが言葉を話すようになって
バイリンガルになるまでの過程ってどんなものなのか気になりませんか?
それに関する論文や本もいくつかありますし、読んだこともありますが、
やっぱり実際にそのような人に会ってみないとわからないことも多くありますよね。
この記事では、わたし(sora.m)が今まで出会ったバイリンガルや
そうなりそうな人たちのことを、ケーススタディのように紹介して、
バイリンガルとはどのような人たちなのか考えてみたいと思います。
①日独ハーフの同年代の女性
彼女の場合はドイツで生まれ育ったのに日本語もネイティブのように話せます。
日本人留学生と、深い話も日本語でできる数少ない友人で、
日本人と話すことでドイツ人と違った考え方を聞けて楽しいと言っていました。
ドイツの大学に日独ハーフの学生は他にもいたようですが、
日本人留学生はみんな彼女の日本語が一番自然だと言っていました。
(もちろん普段使わない言葉だと、知らない単語もあったみたいですが)
話を聞くと、小さい頃から日本人のお母さんと話すときは日本語を使っていたのだそう。
わたしの読んだ論文や本でも、子どもをバイリンガルに育てたい場合は
家族内で言語の役割分担(例:お母さんは日本語、お父さんはドイツ語)
をするといいと書いてあるものが多かったと思います。
②日米ハーフの1歳くらいの女の子
日本のインドカレー屋で偶然出会った、わたしの友人の知り合いのお子さんです。
食事中、両親がそれぞれの国の言葉で話しかけていましたが、
彼女は喃語(赤ちゃん語)も言葉も話していませんでした。
(言葉の意味はよく理解しているようで、身振りで何か伝えようとしてくることはありました)
多言語の環境にいる子は言葉が出るのが遅いと聞いたことがありますが、
本当にそうなんだなと実感した出来事です。
③日本に暮らす中国人留学生の幼稚園児の息子
留学生がわたしの実家に親子でホームステイしたときの話です。
お母さんは、息子の日本語が幼稚園のほかの子と比べて遅いと心配していました。
(わたしの家族はそれは仕方ないと言って慰めました)
その子に、わたしの父が「ふりかけご飯」を指して、
「これは中国語で何て言うの?」と日本語で尋ねると、
「ふりかけご飯…。」と日本語で返していました。
どうやらまだ日本語で話しかけられると日本語で、
中国語で話しかけられると中国語でしか返せないようでした。
中国語と日本語の区別もまだないのかな?と思いました。
いつから「ふりかけご飯」を中国語で日本人に
説明できるようになるんだろう?と興味深く思いました。
④ドイツで生まれ育ったトルコ人の同年代の女性
過去記事によく登場する友人のことです。
彼女は移民1世であるご両親と話すときはトルコ語ですが、
他の家族やトルコ人の友人と話すときはドイツ語とトルコ語をミックスしています。
トルコ語については、学校教育を受けて身に着けたわけではないので、
家族から「そのトルコ語は変だ」と言われることもあるそうです。
余談ですが、彼女は日本語・韓国語・英語などたくさんの言語を学んでいる多言語話者なので、
日本語に韓国語が混ざったり、トルコ語がわからないドイツ人にも
癖でトルコ語をミックスして話したり、といったミスがよくあります(笑)
4つのケースを見てきて、この記事のわたしなりの結論は、バイリンガルとは
自分の考えを二つの言語どちらでも十分に表現できることを言うのかなということです。
細かい文法や単語のミスは一つの言語しか話さない人にもよくあります。目立たないだけです。
たくさんのバイリンガルを見てきたわけではありませんが、
ミスする割合は一つの言語しか話さない人と同じくらいだと予想していますし、
ここではその問題は重要ではないと思います。
それでもまだわからないことは多いです。
バイリンガルの人は考え事をするときどちらの言語でするんだろう?
日本語を話そうとするときの頭のなかは日本語?ドイツ語?
一度脳内にお邪魔してみたいくらい不思議です。
よく言語が違うと見える世界も違うんだと聞きますが、
バイリンガルの人の場合はどうなっているのでしょう…。
それから、多言語の教育は失敗するとどちらも十分に話せなくなると聞くので、
バイリンガルになりそうな子どもたちみんながいい方向に進むといいなと思います。
③の幼稚園児の子の話はもう何年も前のことなので、もし日本語がまだわかるなら、
もう「ふりかけご飯」を中国語で教えてくれるようになっていると思います。
以上、言語に興味のあるわたしの視点から考えたバイリンガルの話でした。
今のご時世、まわりにそういう友達や知り合いがいるという方も多いと思います。
どんな子ども時代を過ごしたのか聞いてみるのも面白いかもしれませんね。
sora.m
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